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小太刀

三  本  目

 

打太刀は中段、仕太刀は下段半身の構えで、打太刀は立会の間合から、右足、左足と進み、次の右足を踏み出すとき
仕太刀が入り身となろうとするのを中段から諸手右上段に振りかぶって、仕太刀の正面に打ち下ろす。
仕太刀は、その刀をいったんすり上げて打太刀の右斜めにすり落とす。

 

  仕太刀の下段半身のとりかたと打太刀の構えかた

仕太刀は剣先を下げて下段にとる。右拳の高さは太刀の下段の構えの高さに準ずる。
剣先の高さもおおむね太刀の下段の構えの角度に準じて下げた高さとする。手首は折らないようにする。

足は踏み変えず、半身になって攻める気持ちで下段にとる。

打太刀は、これに対して剣先を下げないで、中段のまま構える。

 

  打太刀の打ちこみかた

右足、左足と進んだが、仕太刀が入り身となろうとしてつけ込むので、やむを得ず右足を踏み出しながら、
諸手右上段に振りかぶって仕太刀の正面に打ち下ろす。

仕太刀の頭上めがけて、あごまで切り下げる気持ちで打ち下ろすのであるが。
仕太刀の面より少し高い位置ですり上げられるのを心得て打ち下ろす。かけ声は、このときかける。

 

  仕太刀のすり上げ方とすり落としかた

右足、左足と進み、右足を踏み出して入り身となろうとするところを打太刀が打ち込んでくるので。この刀をすり上げてすり落とす。

右腕を十分に伸ばし、面よりも少し高い位置で、物打ちの左鎬ですり上げ、打太刀の右斜め後ろ下に向かってすり落とす。

打太刀の刀を受け止めてそのまますり落とすのではなく、いったんすり上げてからすり落とす。

すり上げとすり落としは一拍子で行う。

打太刀の体勢を後方へ崩すような気迫ですり落とす。すり落としたとき手首が折れないようにして剣先を生かす。

巻き落としにならないようにする。刃は右斜め下を向く。

 

  打太刀のすり落とされかた

すり落とされたら直ちに手は死太刀となり、剣先は右下後方に落とされる。刃は左斜め下を向く。

 

打太刀は、直ちに左足を踏み出し、仕太刀の右胴を打つ。仕太刀は左足を左斜め前に踏み出し、
体を右斜めにひらくと同時に胴に打ってくる打太刀の刀を、左鎬ですり流し、そのまま左鎬で、打太刀のつば元にすり込み、
小太刀の刃部のはばきで打太刀のつば元を押さえて、入り身になり、打太刀の二の腕を押さえる。

 

  打太刀の胴の打ちかた

すり落とされた体勢から、直ちに左足を踏み出しつつ脇から頭上へと大技で振りかぶって胴を打つ。
その際、やや高めに(仕太刀の体の大小に応じて)打ったほうが、仕太刀が打太刀の刀をとらえてすり流しやすい。

低く打つとすり流しにくく、かつ、打太刀の指を傷つける危険がある。

胴を打つときは、かけ声はかけない。

 

  仕太刀のすり流しかたとすり込みかた

すり流すとき、右拳が高いと指を傷すける危険がある。手首を柔らかくして右拳を腹部の前から右へ真一文字(まいちもんじ)に運びつつ。
刃先を右に向けて左鎬ですり流す。このとき手首を起こさないと打太刀の刀が滑る危険がある。

すり流したら直ちに刃を起こしつつすり込む。この場合、手首を柔らかくし、太刀を押さえぎみにしてすり込まないと、
太刀のつばの上を滑って打太刀の指を傷つける危険がある。
手首を起こして仕太刀のはばきが打太刀のはばきに直角になるようにしてつば元にすり込む。すり込み終わったときは、
仕太刀のつば元が打太刀のつば元と接する状態にして押さえる。

すり込み終わったときは、小太刀と太刀はおおむね十文字に交差させる。

かけ声はすり込む際にかける。

 

  二の腕の押さえかた

右ひじ関節のやや上部を横より押さえ、小太刀で太刀を上から制しているのと合わせて、腕の自由を制するようにする。

 

打太刀がひくので、仕太刀はそのまま攻めて、二、三歩進み、右拳を右腰にとり、刃先を斜めしたに向けて、剣先を咽喉部につけ、残心を示す。

そのあと、打太刀は右足から仕太刀は左足から相中段になりながら刀を抜き合わせた位置に戻る。

 

  打太刀のひきかたと仕太刀の攻めかた

打太刀は腕の自由を制せられてひくので、仕太刀はどこまでも逃がさぬ気迫で攻め進む。
この場合の足運びは、打太刀は右足、左足、右足、仕太刀は左足、右足、左足と、それぞれ小足で早く三歩進退する。

 

  残心の示しかた

仕太刀は攻めおわったとき、更に打太刀の腕をねじ上げる必要はない。剣先のけかた等はおおむね二本目と同じ。

 

  中央への戻りかた

打太刀は右足から仕太刀は左足相中段となりながら中央へ戻る。他はおおむね二本目と同じ。

 

この場合、小太刀の形が終わるので、そんきょして互いに刀を納めて立会の間合にかえり、立礼して終わる。

 

  立会の間合へかえるときの足の運びかた

太刀の場合に準ずる。

 

最後の礼は、まず互いに礼をし、次に上座に向かって礼をして退場する。

 

  形終了後の所作

相互の礼、上座への礼の後、打太刀はそのまま二、三歩あとずさりしてから座礼の方向に向き、最短距離を経て座礼の位置に至る。

仕太刀もそのまま二、三歩あとずさりしてから太刀の置いてある位置に至り(ことさら体をふり向けない)
上座と反対側のかたひざをついて太刀を併せ持ち(左手も用いる)座礼の位置に至る。

両者同時に座り、座礼の後、打太刀を前にして退場する。